vol.1
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#1 |
迷宮の男
Man in a Maze
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「彼らは上着のボタンを掛け、左腕を体から離していた。
つまり、左脇に重い拳銃を吊っている」
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#2 |
小さな巨人
Little Giant
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「確かに、ローザはテロリストです。
しかし今、彼女は運動に疲れ果て自首したがっています。
ドイツの法律では、自首した方がずっと罪が軽くなるんですよ」
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#3 |
ラザーニェ奇譚
Strange Tale of Lasagna
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「今君が死んだら、私の必殺のジョークを聞かせる相手がいなくなるじゃないか。
傑作なんだ。
学生時代の私の友人なんか、それを聞いてソ連に亡命しちまったんだ」
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#4 |
不死身の男
Immortal Man
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「よくも法螺話で我々から金を巻上げてくれたな!
お前がプロの詐欺師だということは、調べがついているんだぞ!
ジタバタせずに、大人しく 10 万ドルを返せ!」
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#5 |
屋根の下の巴里
Paris Under the Roof
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「実は私も、エジプトだけがヨーロッパ文明の源とは考えていません。
古代文明が成立するのは、大量の食糧生産が可能な温暖なる平野部です。
ヨーロッパでこの条件を満たし、本格的発掘のなされていない地域が1 箇所だけあります。
ドナウ河流域です」
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vol.2
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#6 |
白い女神
White Goddess
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「女房、いや元女房に言わせると、君は学生時代モテモテだったのに、男には見向きもしなかったって」
「あら残念。
私がモテたなんて、今まで知らなかったわ」
「君みたいないい女がかい?
そう言えば、トレバーはどうした?
君に首ったけで、とても優秀な奴だった」
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#7 |
遥かなるサマープディング
Memories of Summer Pudding
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「40 年前、この家を買って正解だった。
今じゃ、おいそれと手に入る代物じゃあない。
実は、お前のおばあさんの意見で買ったんだ。
しかし、ちっとも昔と変わらんな。
あいつがいた頃のまんまだ」
「それを言うなら、放ったらかしのおじいちゃんに代わって、いつも手入れをして下さっている、お隣の新庄さんに感謝するのね」
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#8 |
交渉人のルール
Negotiator's Rule
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「主人は?」
「元気だ」
「その証拠がなければ、お金は。
彼の大学の校歌の出だしを聞いて」
「日本語の答は駄目だ」
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#9 |
貴婦人との旅
Jounrney with a Lady
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「税関吏がパスポートを調べていますけど」
「それが最後の難関だわ」
「難関?」
「私は、お金もパスポートも取られた老人。
でも、国境は越えたいの」
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#10 |
チャーリー
Charlie
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「さぁさぁ、みなさん、たくさん召し上がっとくれ」
「俺のお袋だ。
そう言えばお前、お袋初めてだったな」
「口に物を入れて、喋るんじゃないよ。
お客さんに失礼だろう。
それに何だい、その手は?
ちゃんと洗えって、あれほど言ったのに」
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vol.3
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#11 |
特別なメニュー
Special Menu
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「おじいちゃんがね……今度帰るとき、スコッチの土産忘れるなって」
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#12 |
御婦人たちの事件
A Case for Ladies
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「私からいくら取るつもりだ?
私はお前たちのような脅迫者など、怖れはしないぞ!」
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#13 |
穏やかな死
A Peaceful Death
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「そのバッグの中身は、俺の最高傑作だ。
作動したら、俺でも分解できるかどうかだよ……」
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#14 |
心の壁
Wall in One's Heart
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「私は苦しんで当然なんだ。
あの 2 人を見捨てたんだから。
どんな報いを受けても当然なんだ」
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#15 |
長く暑い日
Long Hot Day
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「パンプローナに行きたいんですが、バスの時間って分かりますか?」
「今日はもう出ないよ。
ブルゲーデ村まで行けば、まだバスはあるけどね。
今からじゃ、日が暮れちまう」
「足には自信がありますから」
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vol.4
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#16 |
永遠の楡の木
The Elm Tree Forever
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「まず破産の原因ですが、引受けた保険金の支払いに、全財産を充てざるを得なかったのです」
「まさか。
そんなことで、破産にまで追いやられるのか?」
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#17 |
バラの館
A Mansion of Roses
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「彼女は今、最愛の夫を失って、悲しみのどん底にいるんだぞ。
あの美しい人をこれ以上悲しませる奴は、俺が許さない。
たとえ、幼馴染みのお前でもな」
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#18 |
フェイカーの誤算
Miscalculation of a Faker
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「では、学長選挙に出られるのですか?」
「学長が今度、引退されるのでね。
私も柄じゃないと思うんだが、どうしてもと言う人たちがいてね」
「対立候補は誰なんです?」
「ほら、噂をすれば何とやらだ」
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#19 |
空へ…
Into the Vast Sky
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「はい、平賀です。
おお、百合子か。
どうした?
何、東京近郊で大鷹が生息しているところ?」
「そう。
おじいちゃんなら、知っているでしょう」
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#20 |
臆病者の島
The Island of the Cowards
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「ニールは、喘息の新しい特効薬の製法を記録したディスクをここで彼らに渡すことになっていた」
「犯罪組織の彼らが、何故その薬を?」
「彼らの狙いは、薬の製造過程でできる覚醒剤メチルプロパミンだ」
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vol.5
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#21 |
アザミの紋章
The Thistle Emblem
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「伝説が間違っていて、アンガスは娘と駆け落ちし、子供の顔を見られたなんて可能性もあるんじゃないか?」
「それと願うばかりですが」
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#22 |
シャトー・ラジョンシュ 1944
Chateau Lajonchee 1944
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「あの、(支払いは)カードで」
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#23 |
出口なし
No Way Out
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「ここも、昔はいいパブだった。
それがどうだ。
モーカム財閥の合理化のせいで、このザマだ」
「あんたは、そのモーカム財閥とグルだったんだろ、ケンドル。
俺は、あんたのファンだった。
だが、そいつは取消すよ」
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#24 |
オプの生まれた日
The Day the Op Was Born
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「綺麗な星空だな。
ロンドンの町中とは、大違いだ」
「古代人と同じ場所から星を見ていると、彼らの心が近くに感じられます」
「また始まった」
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#25 |
砂漠のカーリマン
Kalihman of the Desert
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「もって 4 時間の命でしょう」
「あの背広の男は、もう少し長く生きるかもしれん」
「あの文明崩れが?」
「背広に長ズボンは直射日光を避け、通気性もいい。
それを知ってやっているとすれば、あの男、只者ではない」
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