夏目 房之介さんの「マンガは今どうなっておるのか?」に、「『PLUTO』と『アトム』 浦沢 直樹試論」という項があります。
これは、勝鹿 北星さんと江戸川 啓視さんと東周斎 雅楽さんの関係は?で取り上げたコラムに大幅加筆したものです。
いまひとつ不明瞭なのは原作者の存在だが、浦沢個人は原作者と直に打合せをしていない。
長崎の語ったことを信じれば、彼が作品設定を発案しマンガ家と原作者を選んだという。
直接打ち合わせをしているのはほとんど長崎で、その段階で原作を改変していたというのが浦沢・長崎の語ったところだ。
ここではそう理解しておく。
どの作品について述べているのか明記されていないのですが、2 つ前の段落で「浦沢的『ゴルゴ』路線」とあるので、以下の両方を指すものと思われます。
- 「パイナップル ARMY」(作:工藤 かずや/画:浦沢 直樹)
- 「MASTER キートン」
引用部分は 2005 年 1 月の初出にはなかった文章なので、文藝春秋「週刊文春」2005 年 5 月 26 日号を受けて加筆したのでしょう(一部似ている文章は、朝日新聞社「AERA アエラ」2005 年 4 月 4 日号にあります)。
「浦沢・長崎の語ったところ」の時期については、「週刊文春」発売後かもしれないし、「AERA アエラ」のインタビューのときかもしれないし、それより前かもしれません。
それはともかく、浦沢 & 長崎さんが夏目さんに語ったことは、「週刊文春」記者に語ったこととは大きく異なります。
- 「週刊文春」記者に語った内容
- 浦沢さんと長崎さんが作る話が主流であった(浦沢さん)
- 長崎さんの担当当時、勝鹿さんは原作を仕上げたことがなかった(長崎さん)
- 全部、長崎さんと浦沢さんで原作を書いていた(長崎さん)
- 夏目さんに語った内容
- 原作を改変していた
何も分かっていない「週刊文春」記者に比べ、専門家の夏目さんに対してはかなりトーンダウンしていることが窺えます。
その後、2010 年 3 月 19 日の西原 理恵子の人生画力対決〜浦沢 直樹 SPECIAL〜1st ステージでも、似たような浦沢さんの発言がありました。
また、長崎さんは樹林 伸 VS. 長崎 尚志でも、原作を改変していたことを堂々と認めています。
- 勝鹿 北星名義の代表作
- きむら はじめ名義の代表作
- ラデック・鯨井名義の代表作