樹林 伸 VS. 長崎 尚志

2008 年 6 月に発売された河出書房新社「KINO キノ」vol.07 に、21 世紀のマンガビッグ対談「樹林 伸 VS. 長崎 尚志」(構成:西田 真二郎)という記事が載りました。

——ともに元編集者であり、いまも編集者を兼任しながら原作者をやっているわけですが、会社を辞めてから、仕事のスタイルに変化はありましたか?

樹林 何も変わってないんですよね。原作を書き終わった後に、編集者になって、自分の書いたものを「おもしろくねーな」って言いながら、削ってみたり、付け加えてみたりとかしながら、ネーム、絵コンテの段階でこんなものいらねーなとかって、バサッと切ってみて、つなぎ合わせてみたりとか、足りないとこ足してみたりとか。それをやってる時は、まったくの編集者ですね。(後略)

長崎 僕も基本的にはいままでと同じですよね。上がったシナリオがネームになっちゃったら、そこから編集者になっちゃうから。そこはちょっとマンガの編集をしていない原作者の人とは違うところだと思う。樹林さんもそうだと思うけど、僕はネームまで見たいと言います。そこからは編集者になっちゃって、自分が気に入ってたはずのところまでも削ったりすることがあるんですよ。あとはマンガ家が違うところがいいと思って、そこにとてつもなくいい絵を描いてきたら、自分が気にいった場面を削ったりもします。

樹林 実際、そこが僕らの一番の強みですよね。つまり普通の原作者っていうのは、おそらく、一般的に僕の見聞きしている範囲ですけど、だいたい自分の書いた原作の方を変えるのを嫌がるんですよ。でも、僕らは少しも嫌がらないですよね。面白くなくなっちゃったら嫌がるんですけど、面白くなる限りにおいては、いくらでも変えてもらってかまわない。逆に自分でもさっくりと変えます。そこは強みかな。

長崎 そうですね。それでシナリオの方が面白かったら負けなんですよね。マンガの方が面白くならないと。時に、よく出来ていると思っているシナリオでも、相手に伝わっていないことってあるんですよ。逆に相手が別なところを面白がることもある。すると、それ用に書き換えちゃう方が早いんですよ。それは編集者の側にも居た人間だから出来ることですよね。編集者時代でも、原作者からシナリオをもらってきたら、同じことをやってたんです。つまり、僕の場合は自分で自分を説得していくようなもんなんですよね。

KINO

長崎さんは、編集者時代から原作を書き換えていたそうです。

3 つ目は、南 信長さんの見解です。