韓国の雑誌での浦沢 直樹さんのインタビュー

韓国の朴さんから、日本語でメールを頂きました。

「MASTER キートン」の原作者に関する調査、興味深く読ませていただきました。

「MASTER キートン」は大好きな作品で、漫画だけじゃなくアニメ版の DVD も(一部だけど)持っています。

浦沢さんの作品はここ韓国でも人気があり、結構高く評価されていて、新刊は漫画販売上位に必ず入ります。

でも個人的にはやっぱり「MASTER キートン」が一番好きで、日本のサイトなどを検索して原作者に関しても調べました。

その結果、勝鹿さんがきむら はじめやラデック・鯨井など他のペンネームで原作を担当したことも知って、それらの作品も買って読みました。
それらの作品も良かったので、勝鹿さんの新作を楽しみにしていたんです。
だから私もこの問題に対してすごく興味を持っています。

ところで、最近家の中の古い雑誌から「MASTER キートン」に関する面白い記事を見つけたので、これを報せようとメールしました。

以下は韓国の雑誌「月刊コミックテク (COMIC TECH)」1998 年 4 月号に掲載された浦沢さんのインタービュー記事中、「MASTER キートン」に関する部分です。
雑誌の発行日が 3 月 5 日だから、インタービューは 2 月かもしくは 1 月に行われたと思います。

私の日本語も上手くないですし、また日本語を韓国語に翻訳したものをさらに日本語に訳したものだから、ちょっと変な部分があっても許してください。

——「MASTER キートン」はどうしてはじめることになりましたか。

「パイナップル ARMY」という作品で主人公のキャラクターが弱いといつも思っていました。
連載が終わった後にも不満が多く残りました。
それでこの次はもっと強いキャラクターで絵を描きたかったのです。
人の助けを受けず、自ら解決するそういう男を考えていました。
そうしているちょうどその時に、原作者と編集者との 3 人で話をしたけど、その時に「MASTER キートン」を誕生させました。
原作は勝鹿 北星という方が書いたけど、とても素晴らしいでした。

——原作者とトラブルはなかったんですか?
いつもストーリを書いてきた方が……。

全然なかったんです。
最終的にシナリオを受けて演出は勝手にしたから全然問題はなかったんです。
もしストーリのラインが気に入らなくて、私なりに変えたい時は、編集者と一緒に 3 人で集まって議論します。
判定は編集者がします。
そして、そんなことがあまりなかったので、トラブルと覚えてることはないですね。

この内容を見ると分かりますが、このインタービューの浦沢さんのコメントと週刊文春の記事は相当に矛盾しています。

浦沢さんはこのインタービューでは原作者とのトラブルは全然なかったと言ってますが、週刊文春の記事では連載中から問題があって印税の部分とかで不満があったと言っています。

それに長崎さんは自分が担当を外れたことによって勝鹿さんが原作を書かなかったことを浦沢さんが知ったといっていますが、浦沢さんはこのインタービューでは勝鹿さんの原作を誉めています。

とにかく、このインタービューが行われた 1998 年初には勝鹿さんと浦沢さんの関係は良好であったと考えれます。

1998 年後半には「MASTER キートン」がアニメ化されますが、そのときアニメ版のクレジットで勝鹿さんと浦沢さんの表記順序が逆になったり(普通は原作者の方が先ですからね)、8 月には勝鹿さんがキートンの設定にあまり関わってないというインタービュー記事が掲載されます。

だから、長崎さんとはどうだったかは分かりませんが、勝鹿さんと浦沢さんの関係は 1998 年初までは良好であったが、98年中ごろにアニメ化の時に何かトラブルが起きたのではないでしょうか。

インタービューが掲載された雑誌の写真を添付します。

COMIC TECH

COMIC TECH

日本のマンガが韓国でも人気があるのは知っていましたが、浦沢作品の人気が高いとは知らなかったです。
フランスとドイツでの浦沢 直樹作品の評価で、仏独 amazon については Naoki Urasawa を調べましたが、amazon は韓国にないので調べていませんでした)

このインタビューがこの雑誌のために行われたのか、日本の雑誌に掲載されたものを翻訳して再録したのか分かりません(少なくとも浦沢 直樹さんの取材歴にはありません)が、仰る通り、

  • 「COMIC TECH」1998 年 4 月号
  • 「ビッグコミックオリジナル」1998 年 8 月 20 日号
  • アニメ「マスターキートン」1998 年 10 月放映

から考えると、「アニメ化の時に何かトラブルが起きた」となります。

ただ、「1993 年頃のインタビューで、勝鹿さんの正体について聞かれた浦沢さんが『僕です』と答えた」と知人から聞いたことがあります。
(詳細をご存知の方は、メールを下さい)

その他の情報も総合すると、連載中から浦沢さん & 長崎さんと勝鹿さんに対立があったものの読者には不仲を感じさせないようにしていたが、「MONSTER」(浦沢 直樹)のヒットに自信を持った浦沢 & 長崎さんが「MASTER キートン」アニメ化の頃から自分たちの主張を訴え始め、長崎さんの横領報道で決定的になったのではないか、と思います。

2 つ目は、生前の菅 伸吉さんについてです。