「MASTER キートン」「ハンサムウーマン」のひったくり事件

藤本さんから、メールを頂きました。

「ハンサムウーマン」、全巻読みました。

「MASTER キートン」に負けず劣らずの濃いストーリーで、とても面白かったです。
確かに「MASTER キートン」と雰囲気(ストーリーの傾向)が良く似ていると思いました。

また、あのような終わり方をしているのが残念です。
もう少し長く続いていれば、「MASTER キートン」と同様に名作と呼ばれていたかもしれないと思いました。

ところで、私も 1 点、「MASTER キートン」と「ハンサムウーマン」でよく似ている話に気が付きました。

「MASTER キートン」第 9 巻第 7 話「五月の恋」と、「ハンサムウーマン」第 4 巻第 3 話「笑う老人」です。
どちらもひったくり事件をきっかけに、戦時の恋話が老人から女の子に語られる話です。

  • 「MASTER キートン」の「五月の恋」
    • 久々に登場する人物(百合子)の性格を説明する 2 ページ強の導入部
    • 日本人観光客の老人(白鳥 幸子)がお土産の入ったカバンをひったくられる
    • 百合子(子供)と白鳥(老人)の 2 人でひったくり犯の根城を捜索
    • 捜索中にサンドイッチ店で、百合子は白鳥から経緯を聞く
    • 白鳥はポール・ウィルキンス(昔の恋人)と会うべきかどうか悩んでいた
    • 白鳥は太平洋戦争前、ウィルキンスに恋をした
    • ウィルキンスは白鳥に、マイロウの小道を一緒に散歩しようと約束した
    • 白鳥は夫の七回忌を控えている
    • 白鳥はボートのオールを使ったナギナタ術で、ナイフを持ったひったくり犯を取り押さえる
  • 「ハンサムウーマン」の「笑う老人」
    • 久々に登場する人物(加藤 龍之介)の性格を説明する 3 ページの導入部
    • 日本人観光客がお土産の入ったカバンをひったくられる
    • 麗(子供)と加藤(老人)の二人でひったくり犯のなじみの故買屋を捜索
    • 捜索中に喫茶店で、麗は加藤から経緯を聞く
    • 秋子は加藤に、苦しい時には笑おう、日本人同士助け合おうと約束した
    • 加藤は第二次世界大戦後、秋子に恋をした
    • 加藤は杖を使った剣術で、ナイフを持ったひったくり犯を取り押さえる
    • 加藤は秋子の葬式を控えている
    • 加藤は秋子の葬式にどんな顔をして行くべきか悩んでいた

掲載時期は「五月の恋」が 1991 年 5 月 20 日号なのに対し、「笑う老人」が 1993 年 12 月 1 日号なので、「笑う老人」の方が 2 年半ほど後に発表されています。

両者の間では登場人物の役回りに違いがありますし、前者が秘めた恋と再会をテーマにしているのに対し、後者は男の涙をテーマとしている点が違っていますが、話の展開はよく似ていると思います。

しかし、仮に「五月の恋」を見た別な作者が「笑う老人」をオマージュ又は盗作として書いたとすれば、「白鳥のお土産の中身」や「長期にわたる音信不通」、「長年の秘めた恋の結果」といった、より印象深い要素を模倣しがちだと思いますが、これらの点は似ていません。

そのため、同一の作者が作った 2 つの話がたまたま似通ったと考えるのが妥当ではないかと思います。

「五月の恋」と「笑う老人」が似ていることは、見落としていました。
これは、類似度 B にしましょう。

さて、ここまでは類似度 B 以下ですが、類似度 A も 2 つあります。

1 つ目は、「MASTER キートン」「ハンサムウーマン」の誘拐交渉です。