「祈りのタペストリー」と祇園祭

2011 年 7 月 16 日(土)に NHK「生中継 祇園祭宵山〜京都が一番熱い夜〜」が放送され、鯉山のタペストリーも紹介されました。

「祇園祭のひみつ」5 ページより。

鯉山「トロイア王プリアモスと王妃カペーの祈り」見送(16 世紀ベルギー製毛綴タペストリー)

紀元前 1200 年頃のトロイ戦争を題材とした、ギリシャの詩人ホメロスの叙事詩『イーリアス』のなかの「トロイア戦争物語」の一場面。レア・シルビアという娘が聖火の巫女になるよう命じられる場面が描かれている。現在のベルギー・ブリュッセルのニケイズ・アエルツという職工の手になる毛綴の 5 枚シリーズの 1 枚で、1580 年から 1620 年頃に製作されたもの。山を飾るために裏を名物裂で覆い仕立てたので、裏面は退色せずに 400 年前の色がそのまま残された。重要文化財。

鯉山「トロイア戦争物語」タペストリーの復元図

鯉山「トロイア戦争物語」タペストリーの復元図。図のように、1 枚のタペストリーを 9 つのパーツに裁断し、山の周囲を飾る前掛、水引、胴掛、見送とした。裁断時は大工の鑿で断ち切ったと伝えられる。

同 92,93 ページより。

鯉山
龍門の滝を登りきった鯉は、龍になるという中国の「登龍門」の故事を表現した山。飛沫を上げながら滝を登る鯉の彫像は、左甚五郎の作と伝えられる。また、前掛・胴掛・水引・見送はギリシャの英雄叙事詩『イーリアス』の名場面を描いた逸品。欄縁を飾る金具は、激流を表現した波濤文様で立体感のある厚肉彫。角房掛金具も波を意匠しており、千鳥を一羽ずつ浮き彫りにしている、明治の名工・村田耕閑の作。
左甚五郎の鯉神像
中国の故事「登龍門」にあるように、黄河の上流にある龍門の滝を登った鯉は龍になるという伝説をあらわす鯉の御神像。躍動感あふれる大きさ約 1 メートル半の木彫りの像で、名匠左甚五郎の作と伝わる。逆巻く波をものともせず、立身出世のご利益にあずかろうと、成功と繁栄を祈念する。
懸装品との不思議な出会い
伊達政宗の家臣である支倉常長がローマ法王パウロ 5 世に謁見し、その際に贈られた 5 枚シリーズのタペストリーを日本に持ち帰ったことによる。会津藩に渡った後、2 枚が徳川家光に、3 枚が天寧寺を通して京都へ持ち込まれた。その 1 枚を鯉山町が購入。他のタペストリーが複数の山鉾で分断され、また徳川家経由で東京芝増上寺に渡ったものが焼失していることから考え合わせても、鯉山の懸装品がいかに貴重であるか伺える。
山を飾るベルギーの名品
山を飾る懸装品は、16 世紀にベルギー・ブリュッセルで製作されたタペストリー。トロイ戦争を題材にした、ギリシャの詩人ホメロスの叙事詩『イーリアス』の名場面で、山飾りのために 9 つに裁断。断ち切る際には、大工のノミを用いたと伝わっているほど、精巧で頑丈な名品だ。国の重要文化財に指定されている。

「MASTER キートン」(作:勝鹿 北星/画:浦沢 直樹)の作中では、鯉山が鯛山に/トロイア戦争物語がペストの大流行になっています。

また、上の説明では「ローマ法王パウロ 5 世に謁見し」ですが、作中では「スペイン国王フィリップ III 世の謁見を受けた時」とあり、諸説あるのかもしれません。

次に、「MASTER キートン」に複数回登場した人物を探します。