(注)このページには主観的推測が多いので、話半分に読んで下さい。
1988 年、小学館「ビッグコミックオリジナル」の編集者だった長崎 尚志さんは、「MASTER キートン」(作:勝鹿 北星/画:浦沢 直樹)を立ち上げます。
勝鹿さんは、当初は順調に欧州取材に行ったりしながら原作を執筆します。
- 「交渉人のルール」
- 「身代金のルール」
「MASTER キートン」がヒットしたのは良かったのですが、勝鹿さん vs 浦沢 & 長崎さんで意見が対立したのでしょう。
ある時期に、勝鹿さんは最終回用の連作を書上げ、「原作を降りたい」と告げます。
- 「学者になる日」
- 「夢を継ぐ者」
- 「本日多忙なり」
- 「ルーマニアへ!!」
- 「チャウシェスクの子供達」
- 「ブカレスト脱出!!」
- 「TA89」
- 「チャウシェスクの隠し資産」
- 「虐殺の村」
- 「絶体絶命」
- 「夢を掘る人」
ここで気になるのが、ほとんど馴染みのないハドソン元警部が、「ルーマニアへ!!」以降大活躍する点です。
もしかしたら、勝鹿さんはハドソン警部が活躍する原作を他にも書いていたのに、浦沢 & 長崎さんが使わなかったのかもしれません。
更に、勝鹿さんが「MASTER キートン」の終了を申入れても、「ビッグコミックオリジナル」編集部か浦沢 & 長崎さんは了承しなかったのでしょう。
以後、勝鹿さんが原作を書かなくなるか、書いても浦沢 & 長崎さんが大幅に変更したり全く別の話を作ったりするようになります。
一方、小学館「ビッグコミックスペリオール」編集部は、「MASTER キートン」のような作品を求め、「MASTER キートン」との関わりが薄くなっていた勝鹿さんに打診し、浦沢さんと絵柄が似ている鎌田 洋次さんに白羽の矢を立てます。
勿論、浦沢 & 長崎さんの了解も取っているものと思われます。
1992 年、「ハンサムウーマン」が始まりますが、勝鹿さんは別のペンネームを使うことにしました。
勝鹿さんは、「ビリー」(作:きむら はじめ/画:由起 賢二)や「ホット DOC」(作:きむら はじめ/画:加藤 唯史)など、犬が活躍する原作を多く書いています。
「MASTER キートン」にも、太助や警察犬や軍用犬が活躍する回は多く、これらが勝鹿さんによる原作である可能性は高いです。
勝鹿さんは、犬の名前の Pranda と「植物」という意味の Planda を掛ければ「きむら」に通じることから、新しく「プランダ村」を名乗ります。
そして、勝鹿さんは「ビッグコミックスペリオール」編集部の要望に応え、「MASTER キートン」とほとんど同じ登場人物や人間関係を「ハンサムウーマン」に再現します。
物語だけでなく、連作のサブタイトルも韻を踏むようにしました。
また、「MASTER キートン」の「ドナウ = ヨーロッパ文明起源説」に相当するものとして、「ハンサムウーマン」では「末広を懲戒免職に追いやった誘拐犯」というサイド・テーマを設定します。
「ハンサムウーマン」単行本の装丁に海野 一雄さんと Bay Bridge Studio ベイブリッジ・スタジオを起用したのが、小学館か「ビッグコミックスペリオール」編集部か勝鹿/鎌田さんか担当編集者か分かりませんが、「『MASTER キートン』風の装丁を」と注文を出したのでしょう。
やがて、勝鹿さんは、「MASTER キートン」最終回用に準備しながら日の目を見なかった原作を蘇らせます。
- 「鮮血のイコン」
- 「五人のイコン」
- 「逆転のイコン」
- 「勝利のイコン」
- 「聖人ゴドノフのイコン」
1994 年に連載続行不可能な状況が生じ、「ハンサムウーマン」は突然終了します。
「ビッグコミックスペリオール」編集部に長崎さんが異動してきて、継続について揉めたとも考えられます。
あるいは、勝鹿さんの健康状態が悪くなったか、手術か入院のため長期休載を余儀なくされ、不本意ながら終了したのかもしれません。
そうだとしても、後に病状は(一時的にしろ)快復し、1996 年にラデック・鯨井名義で「SEED」(画:本庄 敬)を集英社「ビジネスジャンプ」上で連載します。
さて、勝鹿さんが「ハンサムウーマン」の脚本を書くようになった頃には、「MASTER キートン」は浦沢 & 長崎さんの作る話が主流になっていました。
「主流になった」だけで、長崎さんの後任編集者である赤名 英之さんや久保田 滋夫さん(順序不明)の協力もあったでしょう。
他にもブレーンがいたかもしれません。
勝鹿さんの原作も確認されますが、「ハンサムウーマン」連載の傍ら書いたのか、以前書いたものを引っ張り出して原作としたのかは分かりません。
- 「壁の忘れ物」
そして、「MASTER キートン」にも終了の時期が訪れました。
浦沢 & 長崎さんは、以前、勝鹿さんが書いた連作を最終回とすることにしましたが、問題が 1 つありました。
浦沢 & 長崎さんの「MASTER キートン」には、ハドソン警部が登場していなかったのです。
そこで、浦沢 & 長崎さんは、勝鹿さんが書いたハドソン警部が登場する原作から、以下の連作を取上げます。
- 「ベンタヌ山の誓い」
- 「山の裁き」
ただし、浦沢 & 長崎さんが作った話の中から適当な人物に、第 18 巻のハドソン元警部の役を割当てた可能性もあります。
いずれにせよ、「ルーマニアへ!!」以降の大活躍の伏線として、何の説明もないまま、初登場にしてキートンと顔見知りとなっています。
また、浦沢さんは「最終回も僕がエンディングを考えて、終わらせました」と発言していることから、勝鹿さんの最終回を大幅に改変しているのかもしれません。
以上の考察についてメールを頂いたので、「MASTER キートン」「ハンサムウーマン」と 3 大喜劇王でご紹介します。
(注)このページには主観的推測が多いので、話半分に読んで下さい。