「軍鶏」(作:橋本 以蔵/画:たなか 亜希夫)

産経新聞 2008 年 6 月 28 日付より。

青年漫画誌「イブニング」(講談社)に連載され映画化された人気漫画「軍鶏」をめぐり、漫画家と原作者が著作権を争い、東京地裁で訴訟になっていることが 27 日、分かった。
訴えた漫画家側は「ストーリーも人物設定もすべて自分が作り上げた」と主張している。
漫画業界でこうした著作権トラブルは少なくないが、訴訟に発展するのは珍しいという。
「軍鶏」は今年 1 月から休載が続いており、ファンの間では「謎の休載」と話題になっていた。

原告の漫画家、たなか 亜希夫さんは原作者の橋本 以蔵さんを相手取り、作品の著作権者がたなかさんであることの確認や単行本の著作権料約 1 億 5000 万円の支払いなどを求めている。

27 日開かれた第 1 回口頭弁論で、橋本さん側は争う姿勢を示した。

「軍鶏」は、優等生だった主人公が自分の両親を殺害後、少年院で空手を身につけ、格闘家らと戦うというストーリー。
訴状によると、平成 10 年に「漫画アクション」(双葉社)で連載が始まり、16 年からイブニングに移行。
単行本は 25 巻で約 530 万部が発行され、今年 5 月に映画化された。

たなかさんは、「橋本さんは連載当初に大ざっぱなあらすじが書かれた原稿しか出しておらず、ストーリーやキャラクター設定、せりふなどすべて自分が行った」とし、「軍鶏は自分が単独で創作した作品」と主張している。

橋本さんは「弁護士に任せており、コメントできない」としている。

著作権に詳しい弁護士によると、漫画界で原作者と漫画家のこうしたトラブルは珍しくないが、訴訟にはならず、水面下で解決することが多いという。

訴訟で争ったケースとしては、人気少女漫画「キャンディ・キャンディ」が知られる。
このケースでは原作者が絵に対する著作権があると訴え、最高裁は「漫画はストーリーに基づく二次的著作物」と認定し、原作者にも絵の著作権を認めている。

業界に詳しいコラムニストの夏目 房之介氏は「漫画界には契約書を交わす慣習が少なく、原作者と漫画家の仕事の分担もあいまい。それでも著作権料は折半が多く、漫画家が怒るのも無理はないかも。しかし、漫画家はおとなしい人が多く、裁判沙汰になるというのはよほどのことだ」と話している。

夏目房之介の「で?」 > サンケイの『軍鶏』係争記事のコメントより。

僕は基本的に、よほどでないとコメントはしないので、これは勝手に出されたコメント記事です。内容的には、〈それでも著作権料は折半が多く、漫画家が怒るのも無理はないかも。〉の部分は、僕は言ってないはずで、僕の話を受けての記者の創作ではないかと思います。

単行本「軍鶏」の価格は、以下の通りです。

単行本「軍鶏」の価格
巻数 出版社 税別定価
1 〜 10 双葉社 533 円
11 〜 19 552 円
20 〜 25 講談社 540 円

以下の条件を仮定すると、印税は 1 億 4310 万円 (540 * 5300000 * 5 %) となり、たなかさんが求めている「単行本の著作権料約 1 億 5000 万円の支払い」は、印税のほぼ全額であることが分かります。

  • 単行本を 540 円均一
  • 累計 530 万部
  • 印税 10 % を 5 % ずつ折半

訴訟との関係は不明ですが、映画「軍鶏 -Shamo-」の原作には、橋本さんしかクレジットされていません。

映画「軍鶏 -Shamo-」
原作 橋本 以蔵
監督 ソイ・チェン
出演(役名) ショーン・ユー(成嶋 亮)
魔裟斗(菅原 直人)
ディラン・クォ
石橋 稜
フランシス・ン
ブルース・リャン

本題に戻り、原作を改変したマンガに対し、原作者は改変をどう受け止めているか見てみます。