「ビッグコミックオリジナル」と「キートン・マスターズ・ブック」

「ビッグコミックオリジナル」1994 年 6 月 20 日, 1998 年 8 月 20 日号と「キートン・マスターズ・ブック」から、以下が分かります。

  • 「すべての人に花束を」までは、浦沢 直樹さんと勝鹿 北星さんの関係は良好である(文藝春秋「週刊文春」2005 年 5 月 26 日号の長崎 尚志さんの発言が正しいならば、浦沢さんは事実関係を知らなかった)
  • 「主人公の設定に、勝鹿さんは関わっていない」とまでは言っていないが、そのように受取れる談話が加筆されている
  • 「祈りのタペストリー」が勝鹿さんの原作ならば当然だが、長崎さんだとしても 2 人で話しながら展開を考えるのではなく、文章を受取っている
  • 「アザミの紋章」「壁の忘れ物」は勝鹿さんの原作である(「週刊文春」の長崎さんの発言が正しいならば、仕上げたとは言えない)
  • 「壁の忘れ物」は「MASTER キートン」全 18 巻の第 17 巻に収録されており、割と最後まで勝鹿さんが関わっている(「週刊文春」の浦沢さんの発言が正しいならば、「降りたい」とは言ったが降りなかったか、完全には降りずに原作を書いたり書かなかったりしていた)

ここでも、「週刊文春」の記者が、浦沢 & 長崎さんにしか取材していないことが致命的です。

最低でも雁屋 哲さん、できれば勝鹿 北星さんと長崎 尚志さんの作品一覧で挙げた、過去にきむら はじめ = 勝鹿 北星 = ラデック・鯨井さんと組んだことのあるマンガ家さんに、勝鹿さんの仕事ぶりについて取材すべきでした。

美術出版社「コミッカーズ」1997 年 4 月号の「浦沢 直樹インタビュー」(文:南 信長)にも、以下の記述があります。

『パイナップル ARMY』では、それで実際相手を殺さないにせよ、やっぱり爆弾作って、そういうものを必殺技として持っている人間というのはちょっと馴染めない部分があった。
だから『キートン』やるにあたっては、トラウマで一切銃を持てない、銃の代わりに何かそのへんにあるものを使って闘える男っていう設定にしたんです。

「設定にした」の主語は勝鹿さん、と取れなくもありませんが、浦沢さんと読むのが普通でしょう。

しかし、第 7 巻「出口なし」でキートンは「トラウマで一切銃を持てない」どころか、人間に向かって発砲しており、主語が誰であれ矛盾しています。

第 18 巻「虐殺の村」ではマシンガンを撃てない場面があるものの、トラウマが描かれた回はありません。

仕方がないので、次の手掛かりを探します。

勝鹿さんの作品で、「MASTER キートン」に最も近いのが「ゴルゴ 13」(さいとう・たかを)です。
「ゴルゴ 13」は長崎さんが担当した時期もあり、両者が繋がるかもしれません。

きむら はじめさんと雁屋 哲さんと「ゴルゴ 13」について、引続き国会図書館で調べました。