「包丁人味平」(作:牛 次郎/画:ビッグ錠)

「まんが編集術」(西村 繁男)の「III まんがの原作とは何か——原作付きまんがについて」より。

牛 次郎さんとビッグ錠さんのコンビで始まった『包丁人味平』もある時期からは、牛さん原作書かないわけですよ。
牛さんは、ある程度の変更はうるさくいわないんですが、毎回毎回変わるんで、原作のつなげようがなくなったんですね。
牛さんは連載終了しようといったんですが、お願いしてタイトルと設定を使わせてもらったんです。
結局、ビッグ錠さんが一人で描かざるを得なくなったんです。
「ブラックカレー」のところぐらいかな。

ただし、「まんが劇画ゼミ」第 8 巻(梶原 一騎/小池 一夫/牛 次郎)には以下の記述があり、牛さんは途中で書かなくなっても、「包丁人味平」を自分の代表作品と認めています。

彼(ビッグ錠)とは、三作『釘師サブやん』・『くっとろい奴』(画・ビッグ錠・週刊漫画ゴラク・日本文芸社)・『包丁人味平』でコンビを組んだ。
いずれも二、三年以上の長期連載で、二人とも代表作品として、この三作のいずれかはあげるであろうものを描き上げている。

また、原作にはない登場人物についても言及しています。

まんがの中で活躍しているのに、原作にはない登場人物というのが、ままある。
まんが家のアドリブで登場するわけだが、この場合、じゃま(ストーリー上)で困るときとおもしろいから、そのまま、原作のほうでも生かして使ってやれ、という二通りがある。

(中略)

ただ、最悪なのは、まんが家(ビッグ錠のことではない)がかってに描き始めて、それの結果が自分でつけられなくなってしまうときである。
その尻をふくのはまっぴらごめんだから、どうなろうと、私はほうっておく。
おたがいプロなのだから、そのへんはわかりあって仕事をしなくてはどうにもなるまい。
気に入らないストーリーを描くのはいやなことだろう。
同様に気に入らない人物がかってに登場したら、気分の良かろうはずはない。
とかく、原作つき劇画は共同作業だから、不自由な点が出てくる。
まんが家は、その不自由さを百も承知で引き受けないとドジることになる。
途中で、まんが家に仕事を投げ出されたら、原作者はホトホト困るのである。
投げ出しそうなストーリーの仕事なら、初めから引き受けぬことである。
おとなの仕事とはそういうものだろう。

3 つ目は、「アストロ球団」(作:遠崎 史朗/画:中島 徳博)です。