「異人館村殺人事件」と「占星術殺人事件」(島田 荘司)

「金田一少年の事件簿」(案:天樹 征丸/作:金成 陽三郎/画:さとう ふみや)には、過去の推理小説からのトリック借用が多いのですが、中でも悪質なのが「異人館村殺人事件」で、「占星術殺人事件」(島田 荘司)の盗用と言える程です。

「占星術殺人事件」は島田さんのデビュー作で、江戸川 乱歩賞の候補にもなりました。

「金田一少年の推理ミス (2)」(世田谷トリック研究会)に、両作品について以下の記述があります。

だがいずれにせよ、先のストーリー借用の件は尋常ではない。
古典からならまだしも、現役バリバリの作品から、その肝心かなめのトリックの部分を使っているのだから、事前に島田氏から承諾をえていたとしか考えられないのだ。
ひょっとすると、マガジンの『金田一』担当の編集者が、以前は講談社の文芸(推理小説)のセクションにいて、島田氏の担当をやっていた、なんてことなら話はスムーズだろうが……。

樹林 伸さんは、自分のラジオ番組「熱血!ラジカルチャー!!」(ニッポン放送)2005/10/6 で「早稲田大学を卒業して講談社入社後、すぐに『週刊少年マガジン』に配属された」と言っていたので、この説は消えます。

文藝春秋「週刊文春」は、2 週に渡って「金田一少年の事件簿」を取上げたことがあります。

  1. 1997 年 7 月 31 日号
    • ドル箱漫画 5 千万部に隠された秘密
      「講談社」の大ベストセラー『金田一少年の事件簿』作者さとう ふみやは「幸福の科学」会員(4 ページ)
  2. 1997 年 8 月 7 日号
    • 講談社・日本テレビに大波紋
      徹底追及
      『金田一少年の事件簿』は「盗用だらけ」決定的証拠(4 ページ)
    • 講談社・日本テレビに大波紋
      徹底追及
      盗用された作家が緊急寄稿
      島田 荘司「この問題は民事訴訟に発展する」(3 ページ)
週刊文春

週刊文春

週刊文春

「占星術殺人事件」「異人館村殺人事件」の時系列は、以下の通りです。

「占星術殺人事件」「異人館村殺人事件」の関連年表
1981 「占星術殺人事件」発表
1992 「異人館村殺人事件」連載開始
1995 日本テレビ「金田一少年の事件簿」の第 1 話としてドラマ化
「金田一少年の推理ミス (2)」が指摘
1997 「週刊文春」が指摘

「週刊文春」は、連載から 4 年半/ドラマ化から 2 年が経過してから盗用を指摘しており、記事を読んだときは「4 ページも使って、何を今頃」と思ったのですが、島田さん本人の寄稿は貴重です。

自分の愛読者が色々と言っているのは耳に入っているが、自分としては今のところ行動を起こすつもりはない。
ただし、『占星術』に関しては、類例のないトリックであると自負しており、トリックの価値を護るために映像化などの二次使用はお断りしているので、『占星術』をもとにした作品を TV 化する企画があるならば絶対に止めて欲しい。

「金田一少年の推理ミス (2)」の「事前に島田氏から承諾をえていたとしか考えられない」どころか、無断でドラマ化していたことが分かります。

私は「占星術殺人事件」「異人館村殺人事件」を読んだ上でドラマを見ていたのですが、まさか「無許可でドラマ化」とは思いませんでした。

しかも、1 時間で完結させるために六角村を十字架村にして、駆け足であらすじをなぞっただけのお粗末な出来であり、島田さんが気の毒になったものです。

島田さんの寄稿は、大幅加筆されて「21 世紀本格宣言」(島田 荘司)に収録されていますので、興味のある方はどうぞ。

「放送禁止映像大全」(天野 ミチヒロ)に、ドラマ「金田一少年の事件簿」について以下の記述があります。

現在、このドラマを久しぶりに見ようとしても、時代劇『大岡越前』と同様にいきなり第 1 話が見られないという困った状況にある。
ビデオや DVD は発売されているが、第 1 話「異人館村殺人事件」は収録されておらず、その存在は消されているのだ。
現在販売されているビデオではなく、すでに廃盤となっている過去のビデオには、第 1 話も収録されていたのだが……。
もちろん、そのビデオはレンタル店の棚からも姿を消しており、第 2 話からしか借りることはできない。

(中略)

まだ見ていない読者のため、そのトリックは紹介しないが……といっても映像を見ることは難しい(まれに第 1 話を収録したビデオを並べているレンタル店もあるので、見つけたら迷わず借りるべし!)。
そのため、大筋では大差ない原作漫画を読み、そのトリックを確認することをお勧めする。

このように、ドラマ「金田一少年の事件簿」では「異人館村殺人事件」は欠番となっており、アニメ化もされていません。

同じく樹林さんが編集者だった「MMR マガジンミステリー調査班」(石垣 ゆうき)にも、問題になった回があります。